網膜色素変性症と障害年金

このホームページの作者は、障害年金専門の社会保険労務士です。家族が網膜色素変性症で障害年金を受給した事をきっかけに社労士になりました。ところが社労士になって網膜色素変性症の年金相談を重ねるにつれて、患者やその家族はもとより、専門の社労士ですら「網膜色素変性症と障害年金」についての情報が不足していると感じました。
そこで網膜色素変性症と障害年金申請のさまざまな疑問にお答えするホームページを開設しました。このホームページは網膜色素変性症関連に絞ってまとめています。障害年金申請の一般事項はあまり触れていませんので、作者も会員になっているNPO法人障害年金支援ネットワークのホームページもご参照ください。NPOでは無料電話相談も受付ています。

《障害年金申請の流れと手順》

(1) 障害年金で一番大切なのは初診日です。初診日が判ってから年金事務所で保険料納付を確認しましょう。

 

(2) 初診証明を書いてもらうため、最初の病院にカルテが残っているか?尋ねてみましょう。  

 

(3) 自分の眼で障害年金をもらえるかどうか?医師に尋ねて、認定基準を理解することが大切です。     

 

(4) 視力の数値は簡単にわかりますが、視野検査の見方は難しいので、視野検査をもっと知りましょう。

 

(5) 障害年金でもらえる金額は、初診日・家族・障害等級によって違うので、計算しておきましょう。 

 

(6) 障害状態の基準の日が障害認定日です。最大5年間分もさかのぼって年金を請求できる事もあります。 

 

(7) 診断書は最も重要な提出書類です。医師への作成依頼の方法と、記載後のチェックに気をつけましょう。

 

(8) 病歴・就労状況等申立書は患者が自分で書きますが、網膜色素変性症では診断書と同じくらい重要です。

 

(9) 書類が整ったら、年金事務所に提出する前に必ずプロの チェックを受けましょう。
 

 

(1)初診日とは?

<Q-1>

質問:会社の健康診断で網膜の異常を指摘されて、2か月後に専門眼科を受診しました。初診日は健康診断の日ですか?

回答:いいえ、違います。障害年金で使う初診日とは、年金を請求する病気やケガが原因で初めて病院を受診した日です。あなたの場合は、健康診断の日ではなくて専門眼科に行った日です。


<Q-2>

質問:親が網膜色素変性症で私が小学生の時にいきなり大学病院に連れて行かれ、検査を受けて網膜色素変性症の診断を受けました。その時は治療せず、30歳の時に視野が狭くなった気がして専門眼科を受診しました。小学生の時が初診日ですか?


回答:いいえ。「網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現し、初めて診療を受 けた日」とされています。30歳の時に視力低下や視野狭窄で物が見えにくくなって受診されたのなら、30歳の時が初診日になります。


<Q-3>

質問:私は小さい頃から強い近視で、小学校の時から度の強い眼鏡を掛けていました。これは通知表に書かれていて、当時の複数の先生の第3者証明も得られます。近視と網膜色素変性症が相当因果関係ありとして、20歳前の初診日で申請できるでしょうか?

回答:いいえ、認められないでしょう。網膜異常の相当因果関係については「糖尿病と糖尿病網膜症は相当因果関係あり」「近視と黄斑部変性、網膜剥離または視神経萎縮が相当因果関係なし」とあるだけです。その逆に、小学生の時に診察を受けて網膜色素変性症の確定診断を受けており、この診断された詳しい話を第3者証明として先生に書いてもらえれば初診証明になる可能性があります。

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(2) 初診証明の取り方

<Q-4>

質問:  初診証明とは何ですか?


回答:障害年金を受給するには、初診日に国民年金か、厚生年金に加入している必要があります。 網膜色素変性症なら、夜盲・視力低下・視野狭窄などの症状を訴えて初めて受診した日である事を病院がカルテを元に作成する書類です。正式には「受診状況等証明書」 といいます。20歳前に初診がある場合は、国民年金の納付義務がありませんから、加入している必要がありません。初診時に国民年金なら障害基礎年金。厚生年金なら障害厚生年金となります。中卒や高卒で就 職して厚生年金に加入していれば20歳前でも障害厚生年金になります。

ワンポイントアドバイス

最初に受診した病院がなくなっていても、あきらめることはありません。2番目に受診した病院にカルテが残っていたら、受診状況等証明書をその病院で書いてもらい、最初の病院で受診した証拠(2番目以降の病院のカルテに書かれた初診病院の記載、診察券や第3者の証明書等)を付けて申請することも可能です。ただ自分だけで難しいと感じたら早目に社労士に相談することをお勧めします。

                  

 

<Q-5>
質問:初診証明の作成を依頼するときに注意することは何ですか?


回答:障害年金を受給するためには、①初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないか?(初診日が65歳未満)②年金加入から初診日の前々月までの期間で3分の2以上の納付実績があるか?という①か②の条件が必要です。これを「保険料の納付要件」といいます。納付要件を満たさない初診日の初診証明をとっても意味がありません。逆に間違った初診日を年金事務所で相談すると、その記録が年金機構に残ってしまい、後から大きな支障になることもあります。

ワンポイントアドバイス

網膜色素変性症は初めて症状が現われて受診してから、年金申請できる症状になるまで何年、何十年もかかる場合があります。初診日がはっきりしない人は、年金事務所でどこまで初診日の詳細を話すか?についてあらかじめ社労士の無料電話相談等でたずねてから、訪問の予約をするのが良いと思います。(年金事務所を予約する際に、初診日を聞かれることがあります)

<Q-6>
質問:初診証明を受け取って、どこをチェックすれば良いですか?


回答:初診証明(受診状況等証明書)のPDFをごらんください。作成を依頼した病院が初診の病院であると思っていても、受診状況等証明書の⑤ に前医、つまりその病院の受診前に他の病院を受診していたことが書かれていれば、その前の病院の初診を証明しなくてはなりません。受診状況等証明書の⑤で「前医からの紹介状はありますか。で( 有 )に丸が付けられていたら」必ず介状のコピーをもらってください。この紹介状だけが初診を証明する資料になることもあります。

 
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(3)色変の認定基準

 

<Q-7>
質問:私は視野の問題は無いのですが視力が低下しています。右眼は裸眼視力が0.01で矯正視力が0.1です。左眼は裸眼視力が0.02で矯正視力が0.08です。これで障害年金の2級がもらえますか?


回答:いいえ、もらえません。2級の基準両眼の矯正視力の合計が0.05以上で0.08以下​です。両眼の矯正視力の合計で、0.04以下なら1級です。初診日が厚生年金の方なら、両眼の 矯正視力がどちらも0.6以下、またはが片方の眼が0.1以下になれば3級になります。裸眼視力がどんなに悪くても関係ありません。矯正視力だけです。

 

​<Q-8>
質問:私の視力は両眼の矯正視力の合計が0.06で、中心視野の8方向合計が左眼38度で右眼43度です。視力も視野も2級ですから、障害年金の2級ですね?


回答:いいえ、ちがいます。視覚障害の認定では視力と視野を別々の障害として、その上で併合することができます。視力の2級と、視野の2級を併合して障害年金の1級に認定されます。障害年金では複数の障害を併合して最終的な等級が決定されます。視力と視野の併合だけでなく、視力と精神障害の併合や、視野と肢体障害の併合などさまざまな併合があります。

<Q-9>
質問:平成25年6月に視野の認定基準が大きく変わったと聞きました。どのように変わったのですか?


回答:認定改正のPDFをごらんください。改正前の認定基準は「両眼の視野が5度以内(Ⅰ/2視標)」となっていました。しかし、診断書のひとつ の視野結果にⅠ/4視標とⅠ/2視標の2本のイソプタ(等感度曲線)が一緒に書きこまれ塗りつぶされて非常に判り難いものでした。そのため、「Ⅰ/2視標のイソプタの一部でも5度の基準円からはみ出していたらダメなのか?」「イソプタ の描き方によって2度くらいの誤差はすぐでてしまう」などの疑問も多く、患者から不満が出ていました。そこで基準を明確にするため、「Ⅰ/2視標の8方向の視野を数値で記載して、両眼とも合計が56 度以内ならOK」と変更されました。​​​​