​ 精神障害の年金申請 

​心の病気(精神疾患)の方が自分一人で障害年金の申請を行うのはたいへんです。本人がどこまでやれるのか? 家族や周囲の人がどれだけ援助できるのか? どのタイミングで社会保険労務士のサポートを受けたら良いのか? これらの相談を年金申請の流れにそって解します。このページは精神疾患関連に絞ってまとめています。障害年金申請の一般事項はあまり触れていませんので、作者も会員になっているNPO法人障害年金支援ネットワークのホームページもご参照ください。NPOでは無料電話相談も受付ています。

《障害年金申請の流れと手順》

 

(1) 障害年金で一番大切なのは初診日です。初診日が判ってから年金事務所で保険料納付を確認しましょう。

 

(2) 初診証明を書いてもらうため、最初の病院にカルテが残っているか?尋ねてみましょう。  

 

(3) 障害年金の等級を決める「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を理解しましょう。     

 

(4)  障害年金でもらえる金額は、初診日・家族・障害等級によって違うので、計算しておきましょう。 

 

(5) 障害状態の基準の日が障害認定日です。最大5年間分もさかのぼって年金を請求できる事もあります。 

 

(6) 診断書は日常生活能力をどうやって医師に伝えて診断書に書いてもらうか?が最大のポイントです

(7) 病歴・就労状況等申立書は患者が自分で書きますが、むつかしいと思ったら社労士に頼みましょう。

 

(8) 書類が整ったら、年金事務所に提出する前に必ずプロの チェックを受けましょう。

(1)初診日について

 

<相談-1>

相談:3年前に会社の人間トラブルから胃痛とだるさで近所の内科医を受診しました。医師は胃薬を処方しただけでした。2年前に何をする気にもなれず、会社を休み、1日中布団から出られない日が続いたため心療内科に行き、うつ病と診断されました。私の初診日は3年前の内科の受診日でしょうか?

回答:いいえ、そうとは限りません。「うつ病の初診日はうつ病と相当因果関係のある体調の不調を訴え受診した日で、精神科や心療内科の受診だけでなく内科の受診なども当てはまる」と言われてきました。​しかし、その内科医があなたの胃痛をストレスから来る精神疾患の症状かも知れないと疑い胃薬のほかに抗うつ剤を処方したり、精神科の受診を勧めてそれがカルテに記載されていなくてはなりまん。そうでないと単なる胃痛との区別がつきません。

​アドバイス

障害年金申請は証拠主義、つまり「カルテ第一主義」と覚えてくだい。

<相談-2>

相談:私は子供のころから人づきあいが苦手忘れ物や遅刻が多く、「少し変わった子ね」と言われていましたが、大きな問題もなく学校を卒業して会社に就職しました。入社2年目に違う部署に異動になってから社内トラブルが増え、出社ができなくなり診療内科を受診して発達障害(自閉症スペクトラム)と診断されました。「発達障害は4歳・5歳ころに発症して治らない病気だ」と聞きましたが私の初診日はいつになりますか?

回答:あなたの初診日は会社に行けなくなって心療内科を受診した日で、障害厚生年金の対象になります。大人の発達障害の多くは、子供のころから発達障害の傾向はあるものの年間行事や時間割という決まったルールの学校生活では大きな不調が現れず、社会人になって予想外の対応と責任が増えて耐えられなくなり、症状が現れるものです。

​アドバイス

もし20歳前の学生時代に症状が現れて受診していたら未だ年金を収めていませんから、「20歳前の障害基礎年金」になって前年の収入によって年金受給が変化します。

 
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(2) 初診証明の取り方

<相談-3>

相談:  初診証明とは何ですか?

回答:障害年金を受給するには、初診日に国民年金か、厚生年金に加入している必要があります。 精神障害なら、うつ病・双極性障害・統合失調症・知的障害・発達障害・てんかんなどの症状を訴えて初めて受診した日である事を病院がカルテを元に作成する書類です。正式には「受診状況等証明書」 といいます。初診時に国民年金なら障害基礎年金。厚生年金なら障害厚生年金となります。中卒や高卒で就 職して厚生年金に加入していれば20歳前でも障害厚生年金になります。

<相談-4>
相談:初診証明の作成を依頼するときに注意することは何ですか?


回答:障害年金を受給するためには、①初診日の前々月までの1年間に保険料の未納がないか?(初診日が65歳未満)②年金加入から初診日の前々月までの期間で3分の2以上の納付実績があるか?という①か②の条件が必要です。これを「保険料の納付要件」といいます。納付要件を満たさない初診日の初診証明をとっても意味がありません。逆に間違った初診日を年金事務所で相談を一度してしまうとと、その記録が年金機構に残ってしまい、後から大きな支障になることもあります。

<相談-5>

相談:最初に受診した病院が廃院になっていました。もう初診証明はとれませんか?

 

回答:いいえ。最初の病院がなくっていたり、カルテが残っていなくてもあきらめることはありません。2番目以降に受診した病院にカルテが残っていたら、受診状況等証明書をその病院で書いてもらい、最初の病院で受診した証拠(2番目以降の病院のカルテに書かれた初診病院の記載、診察券や第3者の証明書等)を付けて申請することも可能です。ただ精神疾患の人が自分ひとりで対処するには難しい作業になることもあります。そんな時は無理に進めて取り返しのつかない状態になる前に、社労士に相談することをお勧めします。

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(3)精神障害の認定基準

<相談-6>

相談:わたしは、統合失調症で精神障害者保健福祉手帳の2級を持っています。障害年金も2級をとれますか?

 

回答:いいえ。精神の手帳と精神の年金は別物ですから、とれる障害年金2級が取れるとは限りません。手帳の取得には初診日に国民年金や厚生年金に加入している必要はありませんし、保険料の納付要件もいりません。手帳と年金の認定基準は似ていますが、同じ症状でも同じ等級に認定されるわけでもありません。

<相談-7>

相談:精神障害の等級はガイドラインで決まると聞きましたが、ガイドラインとは何ですか?

 

回答:精神障害の認定基準を医学的にピタリと決めることは困難です。従来は、各都道府県の事務センターの認定医が等級の認定を行っていましたがどうしても地域による偏りが問題になっていました。そこで平成28年9月から全国の障害認定を東京で一括して共通ルールの認定審査を行うことにまりました。その共通ルールが「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」です。中でも5ページにある「障害等級の目安の表」です。​

《 障害等級の目安 》
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障害等級の目安を理解することは精神障害の申請ではとても重要です。この内容が自分には「むつかしくて、ついていけない」と感じた方は無理に理解しようとせず、ご家族にご年金申請を頼むか?早めに専門の社労士に相談してください。

詳しく説明します。精神障害の認定基準を簡単に言えば「自分ひとりなら、家族にたよらず生活していけるか?働いて給料をもらえるか?」です。生活と労働が普通にできれば年金はもらえません。逆に寝たきりで自分の身の回りのことや、仕事も全くできなければ最も重い1級です。1級・2級・3級・3級非該当(3級にもならないくらい障害が軽い)をできるだけ公平に判断できるルールがガイドラインで、何級になるかを表にしたのが「目安」です。精神障害の診断書を見てください。裏面の上の左側に「日常生活能力の判定」、右側に「日常生活能力の程度」とあります。上の「障害等級の目安の表」で縦が「日常生活能力の判定」横が「日常生活能力の程度」です。

日常生活能力の判定(縦)

​(1)の適切な食事から、(7)の社会性までの質問に、ひとりならできるか?を想定して主治医が記載するものです。​各質問の答えは左から「できる(1点)」「自発的に(たいてい)一人でできるが、時には周りの人の指導が必要(2点)」「一人ではできないが、助言や指導があればできる(3点)」「助言や指導をしてもできない(4点)」となっています。(1)~(7)までの点数を平均したものが「障害等級の目安」の縦で使われる判定平均です。

日常生活能力の程度(横)

日常生活能力の判定の7つの場面を含む「日常生活全体でなにができないか?」を総合評価したものです。日常生活能力の判定平均より、こちらの日常生活能力の程度の方が重視されます。

​診断書の記入例で説明します。(実際の診断書では文字が小さく横並びで判りにくいので、縦並びに直しています)

  日常生活能力の判定例       

                
(1)適切な食事摂取                      
□    できる (1点)
□    自発的にできるが、時には助言や指導を必要とする  (2点)     

☑    自発的かつ適正に行うことはできないが、助言や指導があればできる (3点)     
□    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない (4 点)      
            
(2)身辺の生活保持                       
□    できる (1点)
□    自発的にできるが、時には助言や指導を必要とする (2点)       
□   自発的かつ適正に行うことはできないが、助言や指導があればできる  (3点)      

☑    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない (4点)
            
(3)金銭管理と買い物                       
□    できる(1点)        

☑    おおむねできるが、時には助言や指導を必要とする(2点)  
□    助言や指導があればできる (3点)       
□    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない  (4点)      
            
(4)通院と服薬                       
□    できる (1点)       
□    おおむねできるが、時には助言や指導を必要とする(2点)        

☑    助言や指導があればできる (3点)
□    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない (4点)      
            
(5)他人との意志伝達および対人関係                      
□    できる        
□    おおむねできるが、時には助言や指導を必要とする        
□    助言や指導があればできる        

☑    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない(4点)        
            
(6)身辺の安全保持および危機対応                      
□    できる (1点)      
□    おおむねできるが、時には助言や指導を必要とする  (2点)      

☑    助言や指導があればできる(3点)        
□    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない (4点)       
            
(7)社会性(公共施設の利用等)                      
□    できる(1点)        
□    おおむねできるが、時には助言や指導を必要とする (2点)       

☑    助言や指導があればできる(3点)        
□    助言や指導をしてもできない、若しくは行わない(4点)        
            
            

  日常生活能力の程度例    

                    
(1)    精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。        
(2)    精神障害を認め、家庭内の日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要である。        

3)    精神障害を認め、家庭内の単純は日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。        
(4)    精神障害を認め、日常生活における身の回りのことも、多くの援助が必要である。        
(5)    精神障害を認め、身の回りのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。        

            
上の例では、7項目の判定合計が22点で平均3.14点、程度が(3)となります。目安の表では2級となっていますが、これだけでは決まりません。家族と同居しておらず、在宅介護のサポート等もなければマイナスになります。現在働いていたり、就労能力があると診断書に記載されればここれもマイナスです。目安はあくまで目安に過ぎず総合的に判断されます。実際の認定では平均3.14、程度(3)ならば3級と認定される人の方が多いように思います。

アドバイス(障害等級の目安をリアル予想)

あくまで個人的な見解になりますが、目安の表より実際に認定される等級が低くなることが多いようです。①A級またはB級とされている場合はB級となる。②一人暮らしなら等級が下がる。③仕事をしていれば等級が下がる。(働いていれば、必ず障害年金がもらえないわけではありません。障害者枠での雇用、労働時間に制約がある、周囲のサポートがあって単純作業を行っている等の状態で、診断書に労働に制約ありと記載されれば年金をもらえる場合もあります)。④程度(2)では3級非該当になる場合が多い。⑤2級となるには程度(4)が望ましい。

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